大雪〜色んな色の冬景色
大雪
12月7日頃~冬至まで
「雪いよいよ降り重ねる折からなればなり」
日に日に寒さは増し、地域によっては雪が降り積もり、熊などは冬眠を始めます。
「おおゆき」ではなく「たいせつ」と読みます。
新しい年の準備である「正月事始め」もこの時期から。
店頭は、サンタやトナカイに、注連縄に鏡餅と、なんだかとても賑やかになってきます。
この時季のイベントはどれも、誰かを思い、優しい気持ちになれるものが多くて、いいですね。
ではさらさらっと七十二候です。
初候
閉塞成冬(そら さむく ふゆとなる) : 天地の気が塞がって冬となる
次候
熊蟄穴(くま あなに こもる) : 熊が冬眠のために穴に隠れる
末候
鱖魚群(さけのうお むらがる) : 鮭が群がり川を上る
どんよりとした冬空に降る雪。
山では熊が冬ごもりを始めます。
鮭は産卵のため、自分の生まれた川へと里帰り。
まるで絵本のはじまりのようですね。
さて、冬枯れのこの季節ですが、私はこの季節の色合いがとても好きです。
今日は二十四節気はさらっと流して(いいのか?)、日本の色の話をしようと思います。
日本の色
「日本の色」と聞いてどんな色を思い浮かべますか?
自然に寄り添い、共に暮らしてきた我々日本人は、色に関しても特別な感性を持っています。
四季を持つ国ならではの、微妙な色の違いを愛し、言葉として残してきました。
今ではデジタルな色合いにあふれ、自然とも少し、距離が離れてしましました。
文化も言葉も、つむぎ続ける限り途絶えません。
ぜひこれを機に、日本の色の豊かさに触れていただき、生活の中で楽しんでいただければと思います。
ではせっかくなので、七十二候より見える景色の色を、切り取っていこうと思います。
【空色】
空は、刻々と表情を変え、色も多彩です。
【空色】という色は、青と白の中間で、紫みの薄い明るい青のことです。
「真空色(まそらいろ)」「空天色(くうてんしょく)」「碧天(へきてん)」などとも呼ばれる、昼間の晴れた空の色を指します。ちなみに、【水色】は空色より少し緑がかった色です。
青空と一口に言えど、【空色】の他に、
真夏のような深く濃い空の色は【紺碧】
晴天の鮮やかな空の色は【天色(あまいろ)】
など、青空を指す色も多彩です。
夜が明け始める頃の空は【曙色】
かすかに紅がかると【紅掛空色(べにかけそらいろ)】
なんと7色ではない【虹色】!!
どんよりとした冬空は【鉛色】
最近は鉛自体を見かけなくなってしまったため、ピンとこないかもしれません。
深くどんよりした「灰色」と思われがちですが、鉛色は、灰色より暗く、少し青みがかっています。
似たような色として、【鈍色(にびいろ)】【薄鈍(うすにび)】
などがありますが、こちらはいわゆる「グレー」のイメージに近いと思います。
(水色、空色、紺碧、天色、曙色、紅掛空色、虹色、鉛色、鈍色、薄鈍色)
余談ですが、鈍色はもともと喪服などに使われる色でしたので、普段は身に着けることはありませんでした。
しかし江戸時代に、幕府から【奢侈禁止令(しゃしきんしれい)】が発布され、庶民の贅沢が禁じられると、江戸っ子たちは発奮。
茶色や鼠色などを「粋な色」として生まれ変わらせました。
「四十八茶百鼠(しじゅうはっちゃひゃくねずみ)」と名付けられましたが、実際は100種類以上の色が、職人たちの創意工夫によって生み出されたそうです。
グレーと呼ばれる色に、百以上もの名前をつけているなんて驚きです。
(素鼠すねずみ、茶鼠ちゃねず、梅鼠うめねず、深川鼠ふかがわねず、紫鼠むらさきねず、利休鼠りきゅうねずみ)
江戸っ子らしい遊び心に溢れたネーミングのものがたくさんありますので、詳しくはリンクをご覧ください。
参考URL https://irocore.com/tag/%E5%9B%9B%E5%8D%81%E5%85%AB%E8%8C%B6%E7%99%BE%E9%BC%A0/
しんしんと降り積もる雪は【雪色】
せっしょく、と読むそうです。
薄い水色が入った白のことで、うっすらと入った青が、光を反射した雪の様子をよく表しています。
冬眠を始める熊。
日本には、ツキノワグマとヒグマが生息しています。
ツキノワグマの体は、黒。
日本の色には【墨色】【吾亦紅(われもこう)】【濡羽色(ぬればいろ)】【黒檀(こくたん)】【暗黒色】【鉄黒】などなど、いろいろな黒があります。
墨色
ツキノワグマの黒が、どの色に近いのかわかりませんが、ぜひここで覚えておいてほしい色は【濡羽色(ぬればいろ)】
黒のようで黒でない、少し青みを帯びた、カラスの羽のような艶やかな色。
最近でこそ良いイメージが少ないカラスですが、もともと日本では、賢く順応性の高い吉兆を示す鳥。
神武天皇が熊野から大和へと抜ける山道で迷った際、道案内をしたのが「ヤタガラス」という三本足のカラス。
日本サッカー協会のシンボルマークにもなっていますので、ご存知の方も多いかと思います。
カラスの羽はよく見ると、黒一色ではなく艶やかな色味を帯びた美しい色をしています。
日本女性の艶やかな髪を形容するのにも使われる【濡羽色】。
どことなく色気のある高貴で美しい黒です。
日本において古くから食用として重宝された「鮭」。
その身の色は、【鮭色】や【乾鮭色(からさけいろ)】などがあります。
(鮭色、乾鮭色)
橙がかった桃色で、なんとなく美味しそうに感じてしまいますね。
鮭といえば北海道ですが、アイヌ民族は鮭をカムイチェプ(神の魚)などと呼び、大切にしてきました。
交易品として用いたり、皮を衣類や靴の材料としたり、鮭の産卵場所を基準に「コタン」という集落を作るなど、生活の一部だったそうです。
他に冬を彩る伝統色としては、鳥居の【朱色】
厳寒に映える松の【松葉色】
クワイの【浅縹(あさはなだ)】
栗きんとんの【支子色(くちなしいろ)】
白菜やふきのとうの【鶸色(ひわいろ)】
温泉に浸かるニホンザルは【団十郎茶】
牡蠣の貝殻は【胡粉(ごふん)】
正月に着る紋付袴は【檳榔子黒(びんろうじくろ)】
などなど、まだまだたくさんあります。
みなさんのお好きな色はなんですか?
移ろう季節の中で刹那に出会える様々な色。
新しい色との出会いがある冬となりますように。
ではまた冬至にて。