寒露〜蟋蟀って読めないし書けない。

寒露 〜十月八日頃から霜降まで
気がつけば肌寒さを覚えるこの頃、体調など崩していませんか?
暦の上では晩秋。
街の色合いもぐっと落ち着き、木々も冬支度を始める頃です。
そして栗がおいしい季節!
縄文時代後期の遺跡である三内丸山遺跡(青森)では、栗を1500年もの長き間栽培していたそうですよ!
そんな遥か昔から身近で大切な食べ物だったのですね。
さてさて、まずは七十二候から。
初候ー鴻雁来(こうがん きたる):雁が飛来し始める
次候ー菊花開(きくのはな ひらく):菊の花が咲く
末候ー蟋蟀在戸(きりぎりす とにあり):蟋蟀が戸の辺りで鳴く
今日は七十二候に出てくる動物と、それにまつわる本についてなどなど、よもやま話を書いていきたいと思います。
よろしくおつきあいください。
雁(がん、かり)のよもやま話
ひと昔前は狩猟の対象であった雁も、急速に減少したため保護鳥となっているそうです。
首が長い大型の鳥で、夕焼け空に群れて飛ぶ雁は、秋の風物詩。
残念ながら最近では限られた地域でした見られなくなりました。
鳥自体にはあまり馴染みがなくなってしまいましたが、身近にたくさんある「雁」をいくつか紹介します。
*家紋
まるでゆるキャラのようなひょうきんな表情をしている家紋です。
雁は鳴き声から、「雁が音(かりがね)」とも呼ばれますが、雁を意匠化した家紋は、「雁金」と書きます。
六文銭の家紋で有名な真田家も、「結び雁金」を使っていました。
家紋って一つじゃなかったんですね。
雁が古来より幸せを運ぶ鳥と言われていたことから、主に平時に使用していたと言われています。
*物語
代表作は、椋鳩十作の「大造じいさんと雁」でしょうか。
物語に出てくる「残雪」という名の雁は、子供心にとても美しく見え、狩人である大造じいさんとのいきさつに、生きるということの意味を考えさせられました。
幼少期に読んだ本の中でも、衝撃的な一冊。
今でも教科書にあるのでしょうか?
*がんもどき
精進料理において肉の代用品として作られました。
味を雁の肉に似せたことに由来する名前だと言われています。(諸説あります)
*茎茶~雁が音
玉露や煎茶の製造過程で選別された茎や葉脈が入ったお茶を、「雁が音」と言います。
雁が海の上で体を休める際に使う小枝に似ていることに由来するそうです。
蟋蟀のよもやま話
バッタに比べて地味な色味(生息域で色が違うらしい)、短い体に長めの後ろ足というフォルム、「ギーチョン、ギーチョン」としゃがれた鳴き声。
なんとなく愛嬌のあるキリギリス。
キリギリスといってまず思いつくのが、イソップ童話『アリとキリギリス』ではないでしょうか。
いそいそ冬支度をする働き者のアリと、歌って暮らす呑気なキリギリス。
結局冬になって、キリギリスは飢えて死んでしまう話。
怠け者ダメよ、という話。
ただこれに関しては、幼少の頃から一言言いたいことがあるんですよね。
キリギリスは、春に孵化し、夏に大人になり、秋に歌って恋をして、冬には死ぬ生き物なんです!!!
怠けてたんじゃなくて寿命です。
しかも子孫を残すための恋の歌、変な言いがかりはやめてあげ欲しいものです。
特にキリギリスが好きなわけではないんですけどね。
濡れ衣を晴らしてやりたい。
最後にもう一つ、本と蟋蟀の話を。
実は『キリギリス』と入力しても『蟋蟀』とは変換されません。
『こおろぎ』と入れると出てきます。
『こおろぎ(こほろぎ)』とは、バッタ目コオロギ科の昆虫の総称で、秋に鳴く虫全般を指していたそうです。今でいう『こおろぎ』は昔、『キリギリス』と呼ばれていたと言いますので、どうもこんがらがります。
”ある日の暮方の事である。一人の下人が、羅生門の下で雨やみを待っていた。広い門の下には、この男のほかに誰もいない。ただ、所々丹塗の剥げた、大きな円柱に、蟋蟀が一匹とまっている。羅生門が、朱雀大路にある以上は、この男のほかにも、雨やみをする市女笠や揉烏帽子が、もう二三人はありそうなものである。それが、この男のほかには誰もいない。”
ご存知、芥川龍之介「羅生門」の冒頭部分です。
荒廃した不気味な羅生門に止まっているのが『蟋蟀』です。
朽ちた朱塗りの柱に止まるのは、黒褐色のコオロギなのか、緑のキリギリスなのか。
ちなみに私は、絶対コオロギ(しかもエンマコオロギ〜写真)だと踏んでいます。
朱と黒のコントラスト、エンマ=閻魔というイメージ、この物語にぴったりです。
皆さんはどう思われますか?
今回は本当にまとまりがないですね(笑)
秋の夜長、虫の声を聞きながら、読書や物思いにふけってみてはいかがでしょうか?ということで!(うまくまとめたつもり)
ともあれ朝夕冷え込みます。
くれぐれもご自愛くださいね。