秋分〜かっこ悪いふられ方
月見れば ちぢに物こそ 悲しけれ わが身ひとつの 秋にあらねど
私が百人一首を覚え始めた頃に、この歌の作者と同名の歌手が、かっこ悪い振られ方について歌っておりました。
歌の意味としては、「私一人にやってきた秋じゃないのはわかっているけど、月を見てると色々な思いが心をよぎり、なんだか物悲しくなってくる。」という意味です。
まさしくそんな季節。恋敗れた切ない男心も似合う、そんな季節です。
それではまじめに始めます。
秋分
第16番目の節気。昼と夜の長さがほぼ等しい。九月二十三日~二十七日ごろ
これから次第に日が短くなり、秋が深まってきます。
〜七十二候〜
初候
雷乃声を収む(かみなり すなわち こえを おさむ)
夕立時に鳴り響いていた雷鳴も聞こえなくなる頃。
次候
蟄虫坏戸(すごもりのむし とをとざす)
虫が巣篭もりを始め、土中に掘った穴をふさぐ頃。
末候
水始涸(みず はじめて かる)
田畑の水を抜き、稲刈りを始める頃。
秋真っ盛り!お月見、秋分の日、お彼岸と、この季節は、収穫に感謝し、月に祈り、先祖を偲ぶ大切な時期です。
しかしよくよく考えてみると、それぞれどんな物語を経て、年中行事になったかわからないことも…
それぞれちょっとずつ、紐解いてみましょう。
1.お月見
中秋の名月、といわれますが、そもそも「中秋」とは、旧暦八月十五日の月のことを言います。
いわゆる「十五夜」です。
満月の一日前の大きな月で、今年は夕方5時半ごろ登りまじめます。
「中秋」とは「秋のちょうど真ん中」という意味で、旧暦八月十五日の名月を「中秋の名月」と呼びます。
(「仲秋」とう漢字で書かれることもありますが、これは秋(旧暦七~九月)の真ん中「旧暦八月」という意味になります。)
【お月見はいつから?】
お月見の風習は9世紀に中国から伝わってきました。
貴族の間に広まり、月を直接見るだけではなく、水面に映った月を愛でたり、詩歌を読んだりと、風情ある楽しみ方をしてきたそうです。
広く庶民も楽しむようになったのは江戸時代以降。
収穫祭や初穂祭の意味合いが大きく、豊かな実りの象徴として十五夜を眺め、お供え物をして感謝や祈りを捧げるようになりました。
【別の名は芋名月】
この時期は里芋の収穫期と重なるということもあり、感謝の気持ちを込め芋をお供えします。里芋は、稲作より古く縄文時代から食べられていたと言います。
豊作に感謝する芋煮会も、各地で執り行われます。
【お供え物】
月見の室礼として、お団子やすすき、秋の七草、里芋などの野菜を、月にお供えします。
まず左手にはススキや七草を飾ります。
ススキを飾る理由は諸説ありますが、稲の代わりだと言われています。稲の収穫期から少しずれてしまうため、同じイネ科で形も似たススキを用いたのかもしれません。
また、ススキは古くから神様の依り代だと考えられてきました。
茎が中空(内部が空洞)のため、神様の依りつく場になると信じられていたのです。
また、すすきの鋭い切り口は、魔除けになるとも考えられており、悪霊や災いなどから収穫物を守り、翌年の豊作を願う意味が込められています。
地域によってはお月見に飾ったすすきを、庭や水田に立てたり、軒先に吊ったりして、災いから田や家を守る風習が今でも残っています。
右手に飾るのは、月見団子や農産物。
お団子の数は、十五夜は15個、十三夜は13個のお団子を飾るのが一般的とされています。
神様にお供えしたものを食べることで、その力を体に取り込むことがでできるとされていますので、お供えした後は美味しくいただきましょう。
元は里芋をお供えしていたそうです。
2.秋分の日・お彼岸
「祖先を敬い、亡くなった人々を偲ぶ」ための祝日です。
もともとこの日はお彼岸であり、先祖を祭る日です。また、お彼岸に一番近い戌の日は「社日(しゃにち)」という雑節の一つで、氏神様にお参りし、秋は収穫に感謝する習わしがありました。
明治の頃「秋季皇霊祭」という歴代の皇祖皇親の霊を祭る宮中祭祀の日を、休日に設定したことが「秋分の日」の始まりです。
【お彼岸】
雑節の一つで、春分・秋分を真ん中とした前後三日、計七日間を「彼岸」といいます。
仏教(浄土思想)ではいわゆる極楽浄土は西の果てにあると言われています。真西に沈みゆく夕日を眺めながら、遥か遠くにある極楽浄土に思いをはせたのが悲願の始まりとされています。
それがやがて先祖供養の仏教行事となりましたが、実はこの彼岸の行事は、他の仏教国にはない日本独自のものです。八百万の神々を祭る祈りの文化があったこの国だからこそ、生まれた習慣なのかもしれません。
お彼岸といえばおはぎですね。
古来赤は魔除けの色。
儀式やお祝いの席などにはよく用いられてきました。
五穀豊穣の思いを「お餅」に、魔除けの意味を「あんこ」に込めて、ご先祖様への感謝と家族の健康を祈念します。
諸説ありますが、牡丹の咲く春にいただくのが「牡丹餅」、萩が美しい秋に頂くのが「お萩」と言われています。
また、あずきの収穫期は秋ですので、新豆を使う秋はつぶあん、冬を越した小豆を使う春はこしあんを使うとも言われています。
ちなみに、夏と冬にも「あんこもち」の呼び名があるのをご存知ですか?
夏は「夜船」
冬は「北窓」
なんとも風情がありますが、その心は??
杵と臼を使わずともいただける「もち」である、と言うのがヒントです。
気になった方は是非調べて見てください。
覚えておくと面白い豆知識かもしれません。(ダジャレのつもりはなかった。)
秋は、感謝と祈りにあふれた季節です。
今では、随分涼しいし連休多くてウキウキ!な九月かもしれませんが、歩みを少し緩め、移ろいゆく景色を眺めながら、(美味しいもの食べながら)様々なものに思いを馳せ、感謝する時間を持ってみるのも、素敵ですね。